補助金最新情報

2023/1/8

事業再構築補助金とは?2023年の改正を含めイチから解説

事業再構築補助金の制度概要が知りたい方に今回の内容は必見です。事業再構築補助金は、補助金制度が創設されてから、まだその歴史が浅く頻繁に改正がある制度です。ただし、建物の取得費用など高額な補助が受けられるとあって、非常に人気が高い補助金になっています。そこで今回は、事業再構築補助金について最新の概要にあわせてイチから解説します。

 

 

 

事業再構築補助金の政府が掲げる目的とは

事業再構築補助金とは新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等を支援することを目的としています。

 

令和4年12月時点の概要では、次のような事業者への活用を経済産業省と中小企業庁はすすめています。

 

  • ・大胆な賃上げや、グリーンを含む成長分野への再構築、規模拡大を検討している事業者
  • ・市場規模が縮小する業種・業態等からの転換を検討している事業者
  • ・新型コロナ・物価高騰等により業況が厳しい事業者

 

コロナ禍の影響により、政府が企業への支援策として創設した補助金で歴史は非常に浅い補助金です。そのため、主軸となる目的にあまり変更はないですが、たびたび申請要件に変更があるため、注意が必要な補助金といえます。

 

 

 

事業再構築補助金の全体像が分かる「申請枠」とは

事業再構築補助金には申請枠(申請類型)が複数用意されています。具体的には次の6つです。

 

・通常枠

・グリーン成長枠

・産業構造転換枠

・サプライチェーン強靭化枠

・物価高騰対策・回復再生応援枠

・最低賃金枠

 

上記6つには、申請するにあたって「このような事業者が向いています」という概要があります。また、申請にあたり前枠共通の以下の必須要件が2つ定義されています。

 

1.事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組むこと

 2.補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0~5.0%(申請枠により異なる)以上増加、または、従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0~5.0%(申請枠により異なる)以上増加

 

(関連記事)経営革新認定支援機関とは?その役割やメリットは?

 

 

成長枠

成長枠は、成長分野への大胆な事業再構築に取り組む事業者向けの申請類型です。補助上限額は従業員数により異なります。申請にあたり、売上高減少要件は必要ありません。ただし、次の2つの要件を満たす必要があります。

 

1.取り組む事業が、過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していること

2.事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること

 

1つ目で定義されている「業種・業態」については、事務局で公募開始時にHPで公開される予定です。

 

【補助上限額】

・20人以下:2,000万円

・21~50人:4,000万円

・51~100人:5,000万円

・101人以上:7,000万円

 

【補助率】

・中小企業:1/2(大規模な賃上げ※を行う場合2/3)

・中堅企業:1/3(大規模な賃上げ※を行う場合1/2)

 

※事業終了時点で、①事業場内最低賃金+45円、②給与支給総額+ 6%の達成が必要

 

 

グリーン成長枠

グリーン成長枠は、研究開発・技術開発又は人材育成を行いながら、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決に資する取組を行う事業者向けです。ここで出てくる「エントリー」と「スタンダード」の内容についても解説します。

 

【補助上限額】

エントリーの場合

20人以下:4,000万円

21~50人:6,000万円

51人以上:8,000万円

中堅企業:1億円

スタンダードの場合

中小企業:1億円

中堅企業:1.5億円

 

【補助率】

エントリー・スタンダードとも同じであり、以下のとおりです。

 

・中小企業:1/2(大規模な賃上げ※を行う場合2/3)

・中堅企業:1/3(大規模な賃上げ※を行う場合1/2)

 

※事業終了時点で、①事業場内最低賃金+45円、②給与支給総額+ 6%の達成が必要

 

 

エントリーとは

次の2つの要件にあてはまった場合は「エントリー」として申請します。

 

・グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取組として記載があるものに該当し、その取組に関連する1年以上の研究開発・技術開発又は従業員の5%以上に対する年間20時間以上の人材育成をあわせて行うこと

・事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること

 

このほか、必須要件の2つ目は「付加価値額の年率平均4.0%以上増加」を求められます。

 

 

スタンダードとは

次の2つの要件にあてはまった場合は「スタンダード」として申請します。

 

・グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取組として記載があるものに該当し、その取組に関連する2年以上の研究開発・技術開発又は従業員の10%以上に対する年間20時間以上の人材育成をあわせて行うこと

・事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること

 

ここでいう、グリーン成長戦略「実行計画」14分野とは次にあげるものすべてが該当します。

 

1.洋上風力・太陽光・地熱

2.水素・燃料アンモニア

3.次世代熱エネルギー

4.原子力 

5.自動車・蓄電池

6.半導体・情報通信

7.船舶

8.物流・人流・ 土木インフラ

9.食料・農林水産業

10.航空機

11.カーボンリサイクル・マテリアル

12.住宅・建築物・次世代電力マネジメント

13.資源循環関連

14.ライフスタイル関連

 

このほか、必須要件の2つ目は「付加価値額の年率平均5.0%以上増加」を求められます。

 

 

サプライチェーン強靭化枠

サプライチェーン強靭化枠は、海外で製造する部品等の国内回帰を進め、国内サプライチェーンの強靱化及び地域産業の活性化に資する取組を行う事業者向けです。また、必須要件の2つ目は「付加価値額の年率平均5.0%以上増加」を求められます。さらに、次にあげる3つについて、製造拠点を国内回帰する事業であることが必要です。

 

取引先から国内での増産要請があること。 

取り組む事業が、過去から今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属 していること

以下の賃金引き上げ等要件をいずれも満たしていること。

 

1.交付決定時点で、設備投資する事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高いこと。ただし、新規立地の場合は、当該新事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高くなる雇用計画を示すこと。

2.事業終了後3〜5年で給与支給総額を平均2%以上増加させること。

 

【補助上限額】

最大5億円

 

【補助率】

中小企業:1/2

中堅企業:1/3

※現状従業員規模での制約はありません。

 

 

物価高騰対策・回復再生応援枠

物価高騰対策・回復再生応援枠は、業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者向けです。必須要件の2つ目は「付加価値額の年率平均3.0%以上増加」を求められます。また、次の2つの要件を満たす必要があります。

 

1.2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、2019から2021年と比較して10%以上減少していること

2.中小企業活性化協議会等から支援を受け、再生計画等を策定していること

 

【補助上限額】

5人以下:1,000万円

6人~20人:1,500万円

21~50人:2,000万円

51以上:3,000万円

 

【補助率】

中小企業:2/3  ※ただし従業員数により別途補助額が設定されています。

  従業員数5人以下の場合 400万円

  従業員数6~20人の場合 600万円 従業員数21~50人の場合は800万円

  従業員数51人以上の場合は1,200万円までは3/4 

 

中堅企業:1/2 ※ただし従業員数により別途補助額が設定されています。

  従業員数5人以下の場合400万円

  従業員数6~20人の場合600万円

  従業員数21~50人の場合は800万円

  従業員数51人以上の場合は1,200万円までは2/3 

 

 

 

最低賃金枠

最低賃金枠は最低賃金引き上げの影響を受け、その原資の確保が困難な特に業況の厳しい事業者向けです。必須要件の2つ目は「付加価値額の年率平均3.0%以上増加」を求められます。また以下2つの要件も必要です。

 

1.2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、2019年~2021年と比較して10%以上減少していること

2.2021年10月から2022年8月までの間で、3月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員の10%以上いること

 

【補助上限額】

 5人以下:500万円

 6~20人:1,000万円

 21人:1,500万円

 

【補助率】

中小企業:3/4

中堅企業:2/3

 

 

 

事業再構築補助金の支援対象となる事業再構築とは?

事業再構築補助金の支援対象となる5つのパターン

事業再構築補助金の支援対象となる「事業再構築」は、「事業再構築指針」で定義されている次の5つのパターンになります。

それぞれのパターンごとに、要件が異なりますので、自社が考えている事業再構築がどのパターンにあたるのかをまず考える必要があるでしょう。

 

①新分野展開

新分野展開とは、『主たる業種(大分類)、主たる事業(中分類)を変更せずに、新製品の製造や新商品・新サービスの提供などを行い、新市場に進出すること』をいいます。

 

例えば、次のようなケースが「新分野展開」にあたります。

(製造業の場合)
航空機用部品を製造していた製造業者が、業界全体が業績不振で厳しい環境下の中、新たに医療機器部品の製造に着手し、5年間の事業計画期間終了時点で、医療機器部品の売上高が総売上高の10%以上となる計画を策定している場合

 

(不動産業の場合)
都心部の駅前にビジネス客向けのウィークリーマンションを営んでいたが、テレワーク需要の増加を踏まえて、客室の一部をテレワークスペースや小会議室に改装するとともにオフィス機器を導入し、3年間の事業計画期間終了時点で、当該レンタルオフィス業の売上高が総売上高の10%以上となる計画を策定している場合

 

②事業転換

事業転換とは、『新製品の製造や新商品・新サービスの提供などを行い、主たる業種(大分類)を変更せずに、主たる事業(中分類以下)を変更すること』をいいます。

 

例えば、次のようなケースが「事業転換」にあたります。

(飲食業の場合)
日本料理店が、換気の徹底によりコロナの感染リスクが低いとされ、足元業績が好調な焼肉店を新たに開業し、3年間の事業計画期間終了時点において、焼肉事業の売上高構成比が、標準産業分類の細分類ベースで最も高い事業となる計画を策定している場合

 

(製造業の場合)
プレス加工用金型を製造している下請事業者が、業績不振を打破するため、これまで培った金属加工技術を用いて、新たに産業用ロボット製造業を開始し、5年間の事業計画期間終了時点において、産業用ロボット製造業の売上高構成比が、日本標準産業分類の細分類ベースで最も高い事業となる計画を策定している場合

 

③業種転換

業種転換とは、『新製品の製造や新商品・新サービスの提供などを行い、主たる業種(大分類)を変更すること』をいいます。

 

例えば、次のようなケースが「業種転換」にあたります。

(賃貸業の場合)
レンタカー事業を営んでいる事業者が、新たにファミリー向けのコロナ対策に配慮した貸切ペンション
を経営し、レンタカー事業と組み合わせた宿泊プランを提供することで、3年間の事業計画期間終了時点において、貸切ペンション経営を含む業種の売上高構成比が最も高くなる計画を策定している場合

 

(製造業の場合)
コロナの影響も含め、今後ますますデータ通信量の増大が見込まれる中、生産用機械の製造業を営んでいる事業者が、工場を閉鎖し、跡地に新たにデータセンターを建設し、5年間の事業計画期間終了時点において、データセンター事業を含む業種の売上高構成比が最も高くなる計画を策定している場合

 

④業態転換

業態転換とは、『製品、商品、サービスの製造方法または提供方法を大きく変更すること』をいいます。

 

例えば、次のようなケースが「業態転換」にあたります。

(サービス業の場合)
コロナの影響でヨガ教室の顧客が激減し、売上げが低迷していることを受け、サービスの提供方法を変更すべく、店舗での営業を縮小し、オンライン専用のヨガ教室を新たに開始し、オンライン専用のヨガ教室の売上高が、3年間の事業計画期間終了後、総売上高の10%以上を占める計画を策定している場合

 

(製造業の場合)
健康器具の製造業者が、感染リスクを抑えることと、生産性の向上を目的として、AI・IoT技術などのデジタル技術を活用して、製造プロセスの省人化を進めるとともに、削減見込のコストを投じてより付加価値の高い健康器具を製造し、新たな製造方法による売上高が、5年間の事業計画期間終了後、総売上高の10%以上を占める計画を策定している場合

 

⑤事業再編

事業再編とは、『合併などの組織再編をして、新たな事業形態のもとに、①新分野展開、②事業転換、③業種転換、④業態転換のいずれかを行うこと』をいいます。

 

基本的には日本標準産業分類に基づく業種区分がどう変わるかがポイントになってきます。
日本標準産業分類は総務省のホームページで確認することができます。

 

 

 

事業再構築補助金の今後の公募スケジュール

2023年の第9回公募スケジュールは以下のとおりとなっております。

 

公募開始:令和5年1月中下旬予定

応募締切:令和5年3月中下旬予定

採択発表:調整中

 

第8回の採択発表は第9回の公募終了後になります。そのため「今回ダメだったらブラッシュアップしてすぐ次にチャレンジ」ということができなくなります。ご注意ください。

 

また、事業再構築補助金の検討をされている方は、改定が多い補助金なので早めに応募されるのがよいでしょう。

 

 

 

まとめ

事業再構築補助金の概要について解説しました。補助額が大きい事業再構築補助金は、ポストコロナを見据えた事業再構築を行う際に役立ちます。活用できるかどうかわからないときは「みんなの補助金」までお気軽にご相談ください。